レストランでの食事が終わり、店員さんが伝票を持ってくる。その瞬間、なんとなく空気が変わるのを感じたことはありませんか。
「ここは私が」「いえいえ、私が」というやり取りが始まるのか、それとも当然のように片方が財布を出すのか。あるいは、スマートフォンの電卓アプリを開いて「じゃあ半分ずつで」となるのか。
初デートのお会計。たかが数千円の話なのに、なぜこんなにも心がざわつくのでしょう。
今日は、この永遠のテーマについて一緒に考えてみたいと思います。答えを押し付けるつもりはありません。ただ、あなたがこの問題で必要以上に悩まなくて済むように、いろいろな角度から光を当ててみようと思うのです。
まず、「男性が払うべき」という考え方について整理してみましょう。
この価値観は、決して古臭いだけのものではありません。日本には「もてなし」という美しい文化があります。ビジネスの場面でも、招いた側が支払いを持つのは当然のこととされていますよね。初デートで男性が支払うという行為には、「あなたを招待しました」「この時間を一緒に過ごせて嬉しいです」というメッセージが込められているのです。
特に30代以上の方々の中には、この価値観を大切にしている人が多くいます。それは単なる慣習ではなく、相手への敬意や気遣いの表現方法として、長い時間をかけて培われてきたものなのです。
一方で、時代は確実に変わっています。
20代の若い世代、特に都市部で暮らす人たちの間では、「対等な関係」を重視する傾向が強まっています。「男性が払うのが当然」という考え方に、むしろ違和感を覚える女性も増えているのです。「私も働いて収入があるのに、なぜ払ってもらわなければならないの?」「それって、なんだか上下関係みたいで嫌」。そんな声を聞くことも珍しくなくなりました。
つまり今は、異なる価値観が混在している時代なのです。だからこそ、初デートのお会計で戸惑う人が多いのでしょう。
では、割り勘を提案されたとき、女性はどう感じるのでしょうか。
正直に言うと、「ちょっと冷たいな」と感じる女性は少なくありません。特に、食事の最後にサッと電卓を出されたりすると、急に現実に引き戻されたような、少し寂しい気持ちになることがあるようです。
その背景には、いくつかの心理が隠れています。「この人は私にどれくらい興味を持ってくれているのだろう」という不安。「次のデートに誘う気がないから割り勘なのかな」という推測。あるいは単純に、「もう少し気遣いが欲しかったな」という期待外れの感情。
ただ、ここで大切なことをお伝えしたいのです。
割り勘を提案する男性が、必ずしもあなたに興味がないわけではありません。彼には彼の価値観があり、「対等な関係を築きたい」「お互いに負担をかけたくない」という誠実な気持ちから、そう提案している場合も多いのです。
実際に、こんなエピソードがあります。
ある28歳の女性は、マッチングアプリで知り合った男性との初デートで、イタリアンレストランに行きました。パスタもワインも美味しくて、会話も弾んで、「この人、いいな」と思い始めていた頃。お会計の場面がやってきました。
男性は自然にお会計を済ませてくれました。彼女がお財布を出そうとすると、「大丈夫、今日は僕に払わせて」と笑顔で言ってくれたそうです。
でも、彼女はそこで終わりにしませんでした。レストランを出た後、近くのカフェに入ったとき、「さっきごちそうになったから、ここは私に払わせてね」と申し出たのです。そして別れ際に、「次は私がおごるね。美味しいお店知ってるの」と伝えました。
この何気ないやり取りが、二人の関係を大きく前進させました。男性は後から「彼女の気遣いが嬉しかった。対等に付き合っていけそうだと思った」と話していたそうです。二人は今、順調に交際を続けています。
支払いは「どちらが出すか」という勝ち負けではありません。「お互いを思いやる気持ちをどう表現するか」という、コミュニケーションの一つなのです。
逆に、うまくいかなかったケースも見てみましょう。
32歳の男性は、気になっていた女性を初デートに誘いました。「いいところに連れて行きたい」という一心で、少し背伸びをして高級フレンチレストランを予約しました。コース料理に合わせたワイン。二人で2万円を超える金額です。
食事中は楽しく会話ができていたのに、お会計の場面で彼は「割り勘でお願いできる?」と言ってしまいました。
女性の表情が、一瞬で曇りました。
後日、共通の友人を通じて、彼女の本音を知ることになります。「高級なお店を選んでおいて割り勘って、ちょっと計算高い感じがした」「最初から割り勘でいいなら、もっとカジュアルなお店で良かったのに」。
彼の失敗は、「場所選び」と「支払い方法」のちぐはぐさにありました。高級店に誘っておきながら割り勘を提案するのは、確かに矛盾しています。もし割り勘が前提なら、最初からお互いが気軽に払える金額のお店を選ぶべきだったのです。
ここで、私の友人から聞いた面白い話を一つ。
彼は初デートで、相手の女性と焼肉屋に行きました。二人とも肉好きで意気投合し、カルビ、ハラミ、タン塩とどんどん注文。気づけばお互いに遠慮がなくなり、「あ、このホルモン美味しそう」「じゃあそれも頼もう」と、まるで旧知の仲のように盛り上がっていたそうです。
お会計の時、彼が払おうとしたら、彼女が「待って、私めっちゃ食べたから。せめて半分出させて」と言いました。彼が「いや、今日は僕が」と言うと、彼女は「じゃあ次のデートは私のおごりね。今日の分、取り返すから覚悟しておいて」と笑ったそうです。
焼肉という「一緒に焼いて、一緒に食べる」スタイルが、二人の距離を縮めていたのかもしれません。支払いの話も、堅苦しくならずに済みました。ちなみにこの二人、今は夫婦です。初デートの焼肉屋は、今でも記念日に訪れているとか。
お店選びって、実は支払い問題を和らげる重要な要素なのです。
最近増えている「カフェデート」は、その点で理にかなっています。コーヒー1杯500円程度なら、どちらが払っても大きな負担にはなりません。「私が払うよ」「じゃあ次は私ね」というやり取りも、金額が小さいからこそ自然にできる。お互いの価値観を探り合う最初のデートとしては、とても賢い選択だと思います。
さて、もう一つ印象的なエピソードを紹介させてください。
25歳の男性は、大学を卒業したばかりで、まだアルバイトで生計を立てていました。気になる女性との初デートが決まったとき、彼は正直に悩みました。見栄を張っておごりたい気持ちと、実際の懐事情のギャップ。
彼は勇気を出して、こう伝えたそうです。「正直に言うと、今月ちょっと厳しくて。割り勘にしてもらえると助かるんだけど、大丈夫かな」
すると女性は、少し驚いた顔をした後、こう返しました。「そうなの? それなら最初から言ってよ。もっとカジュアルなお店でよかったのに。ねえ、次は私が安くて美味しいお店に連れていくから」
彼は拍子抜けしました。もっと引かれると思っていたのです。でも彼女は、彼の正直さをむしろ好意的に受け止めてくれた。「見栄を張らない人なんだな」と感じたそうです。
この二人も、今は良い関係を続けています。経済状況は変わり、今では彼が払うことも増えたそうですが、「あの時正直に言ってくれたから、この人は信用できると思った」と、彼女は当時を振り返ります。
無理をして背伸びをするより、誠実でいること。それが長い目で見たとき、ずっと大切なのかもしれません。
少し視点を変えて、海外のデート事情についても触れてみましょう。
「欧米では割り勘が当たり前」とよく言われますが、実はそう単純ではありません。アメリカでも、伝統的な価値観を持つ地域では男性が払うことが期待されますし、個人によっても考え方は様々です。お隣の韓国では、日本以上に「男性が払うべき」という意識が強いと言われています。
つまり、「海外では〇〇だから」という理屈は、あまり意味がないのです。大切なのは、目の前にいるその人と、どんな関係を築きたいかということ。
日本には日本ならではの「支払い時の儀式」があります。「いえいえ、ここは私が」「そんな、悪いですよ」「いやいや、お気になさらず」というやり取り。外国の人から見ると不思議に映るかもしれませんが、あれは単なる形式ではないのです。
お互いの気遣いを表現し合う、一種のコミュニケーション。「あなたに負担をかけたくない」「でも私もお礼がしたい」という気持ちのやり取りなのです。だから、そのやり取り自体を楽しむくらいの気持ちでいてもいいのかもしれません。
最近は、デートの前にさりげなく価値観を共有するカップルも増えているようです。
「最近、初デートの支払いっていろんな考え方があるみたいだけど、どう思う?」とLINEで軽く聞いてみる。これだけで、当日の気まずさを避けられることがあります。
「私は割り勘派かな。お互い対等でいたいし」と返ってくれば、その通りにすればいい。「うーん、最初くらいはおごってほしいかも」と言われれば、そのつもりで準備すればいい。
事前に確認することを「ロマンチックじゃない」と感じる人もいるかもしれません。でも、価値観の違いで険悪になるよりずっといいと思いませんか?むしろ、「この人はちゃんと考えてくれる人なんだな」という印象を与えることもあるのです。
さて、ここまで読んでくださったあなたに、最後にお伝えしたいことがあります。
初デートの支払い問題に、たった一つの正解はありません。
「男性が払うべき」も正解。「割り勘が当然」も正解。「交互に払う」も正解。大切なのは、あなたとあなたの相手にとって、何が心地よいかということです。
そして、もし支払いの場面で少し気まずい思いをしたとしても、それで全てが決まるわけではありません。
お会計は、デートのほんの一場面に過ぎません。その前に交わした会話、一緒に笑った瞬間、「この人といると楽しいな」と感じた気持ち。そういうものの方が、ずっと大切なはずです。
割り勘を提案されて少しモヤモヤしたなら、それを「この人は冷たい」と決めつける前に、少し立ち止まって考えてみてください。彼には彼の価値観があるのかもしれない。次のデートでは違う一面が見られるかもしれない。
逆に、おごったのに相手の反応がいまいちだったなら、それも「失敗した」と落ち込む必要はありません。お金の問題ではなく、単純に相性が合わなかっただけかもしれないのです。
恋愛において、お金は確かに現実的な問題です。でも、それ以上に大切なのは、お互いを思いやる気持ち。その気持ちがあれば、支払い方法なんて、どうにでも調整できるものです。
あなたが次のデートで、支払いの場面を迎えたとき。深呼吸をして、目の前の相手の顔を見てください。そして、あなたなりの「気遣い」を表現すればいい。それがおごることなのか、割り勘を提案することなのか、「次は私がおごるね」と伝えることなのかは、その場の空気と、あなたの気持ちで決めればいいのです。
大丈夫。あなたの誠実さは、きっと相手に伝わります。
支払いのことで悩みすぎて、デート自体を楽しめなくなってしまったら、本末転倒ですよね。お金のことより、目の前の人との時間を大切にしてください。素敵な出会いを、心から応援しています。
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