恋愛で心が不安定になる時期、それを「病み期」と呼ぶことがありますよね。相手のちょっとした言動に心がざわついて、夜も眠れなくなってしまったり、朝起きた瞬間からスマホを握りしめて相手からの連絡を確認してしまったり。そんな自分に気づいて「ああ、私ってどうしてこんなに弱いんだろう」と落ち込んでしまうこと、ありませんか。
でも、大丈夫です。あなただけじゃない。病み期は誰にでも起こりうる「心の風邪」のようなものなんです。今日はこの病み期について、一緒に優しく向き合っていきましょう。
病み期って、具体的にどんな状態なのでしょうか。それは、恋愛において相手への執着や不安が極度に高まって、精神的に不安定な状態がずっと続いてしまう期間のことを指します。ただの恋煩いとはちょっと違うんですね。もっと深く、もっと複雑で、日常生活にまで影響が出てしまうような状態です。
たとえば、相手がいつもより返信が遅いだけで「嫌われたかもしれない」と胸が締め付けられるような不安を感じたり、SNSで相手のオンライン状態を何度も何度もチェックしてしまったり。朝起きてから夜寝るまで、頭の中は相手のことでいっぱい。友達と話していても「で、彼がね」「彼女がね」と相手の話題ばかりになって、自分でも「ああ、またやってしまった」と気づく瞬間があったりします。
心だけでなく、体にも症状が現れることがあります。夜、布団に入ってもぐるぐると考え事をしてしまって眠れなかったり、逆に何時間寝ても疲れが取れなかったり。食欲がまったくなくなる人もいれば、逆に食べることでしか気持ちを落ち着かせられなくなる人もいます。ストレスから胃が痛くなったり、頭がずっと重かったり、めまいがしたり。ひどい時には、急に息苦しくなってパニックのような状態になることもあるんです。
ここで少し面白い話をしますね。実は私の友人に、病み期真っ只中の時に「占いジプシー」になってしまった人がいるんです。朝起きて「今日の恋愛運」を3つの占いサイトでチェックして、お昼休みにタロット占い、夜には手相占いのYouTube動画を見る。一日に使う占い関連の時間が2時間を超えていたそうです。ある日、5つ目の占いサイトで「今日は連絡が来ない日」という結果を見て、「じゃあ私から連絡したらどうなるの?」と気になって、さらに別の占いサイトを探し始めた時に、ふと我に返ったそうです。「私、何やってるんだろう」って。笑い話のようですが、病み期の時って、本当に普段ならしないようなことをしてしまうものなんです。
さて、どうしてこんな状態になってしまうのでしょうか。
実は、病み期には心理的な理由がいくつもあります。一つは、子どもの頃の経験が関係していることがあります。たとえば、小さい頃に「いい子でいないとお母さんに嫌われちゃうかも」と感じながら育った経験があると、大人になってからの恋愛でも「完璧でいないと見捨てられる」という不安を抱きやすくなります。心理学ではこれを「愛着スタイル」と呼んでいます。
また、自分自身の価値を自分で認めることができず、恋人からの「好き」という言葉や行動でしか自分の価値を感じられなくなっている状態も、病み期を引き起こします。相手の反応が自分の価値を決める唯一の基準になってしまうと、相手の小さな変化にものすごく敏感になってしまうんですね。
そして、現代特有の理由もあります。SNSの普及によって、恋人の行動が以前よりずっと「見える化」されるようになりました。昔なら知らなくて済んだことまで、すべて目に入ってきてしまう。「インスタのストーリーは見てるのに、私のメッセージには返信がない」「あの子の投稿にはいいねしてるのに、私のは…」。こうした情報が簡単に手に入ってしまうからこそ、不安も増幅されやすいのです。
では、この辛い病み期から、どうやって抜け出していけばいいのでしょうか。
まず一番大切なのは、自分自身を理解することです。病み期を「私はダメな人間だ」という証拠として見るのではなく、「今、私の心が何かを訴えているんだ」というメッセージとして受け取ってみてください。
たとえば、感情日記をつけてみることをおすすめします。「今日、彼からの返信が3時間なくて、すごく不安になった。その時の体の感覚は、胸がギュッと締め付けられるような感じだった」というように、自分の感情と体の反応を書き出してみるんです。これを続けていくと、「ああ、私はこういうパターンで不安になるんだな」と客観的に見えてくるようになります。客観的に見えるようになると、少しだけ、感情に飲み込まれずに済むようになっていきます。
そして、健康的な境界線を作ることも大切です。境界線と聞くと「距離を置く」ことだと思われがちですが、そうではありません。これは、相手との距離ではなく、自分自身を守るための線なんです。
具体的には、デジタルデトックスから始めてみてはどうでしょう。「夜10時以降はSNSを見ない」「メッセージが来ても、すぐには返信せずに5分待つ」といった小さなルールを作るんです。最初はものすごく辛いかもしれません。スマホを見たくてたまらなくなるでしょう。でも、その5分、その1時間を乗り越えられた自分を、ぜひ褒めてあげてください。
ここで大事なのは「セルフコンパッション」、つまり自分への思いやりです。友達が同じように苦しんでいたら、あなたはどんな言葉をかけますか?「そんなことで悩むなんてダメだよ」なんて言わないですよね。きっと「辛いよね」「大変だったね」と優しく声をかけるはずです。その同じ優しさを、自分自身にも向けてあげてください。
「また彼のことばかり考えてる…私って本当にダメだな」ではなく、「今、すごく苦しい思いをしている自分がいるんだな。よく頑張ってるね」と、自分に語りかけてみてください。これは甘やかしではありません。傷ついた心を癒すために必要な、優しさなんです。
さらに、恋愛以外の自分の時間を大切にすることも、回復への大きな一歩になります。趣味でもいい、勉強でもいい、運動でもいい。「恋人」という役割以外の自分を感じられる時間を持つことが、とても重要です。
実際に、病み期を乗り越えた人たちの話を聞いてみましょう。
23歳の女性、ここでは名前を出さずにお話ししますが、彼女は元カレとの別れ後、1年以上も相手のことが頭から離れませんでした。SNSのストーリーの閲覧履歴を確認するために、友達に頼んで相手のアカウントをチェックしてもらうまでになっていたそうです。「このままじゃ本当に人生がダメになる」と危機感を感じた彼女が選んだのは、陶芸教室に通うことでした。
最初は気晴らしのつもりで始めたそうですが、土に触れて、ろくろを回して、自分の手で器を作っていくうちに、不思議なことが起こりました。「自分が作り出すもの」に価値を感じ始めたんです。形が歪んでいても、色が思い通りにならなくても、それは自分が生み出した作品。「相手に認められないと価値がない」と思っていた自分が、少しずつ「自分で自分を認められる」ように変わっていったそうです。完全に忘れられたわけではないけれど、「彼のことを考えている時間」よりも「土のことを考えている時間」の方が長くなっていき、気づいたら朝起きて最初にスマホを見ることもなくなっていました。
27歳の男性の話も聞いてください。彼は交際中の相手から既読無視をされるたびに、強い不安発作に襲われていました。胸が苦しくなって、手が震えて、このまま見捨てられるんじゃないかという恐怖で頭がいっぱいになる。あまりにも辛くて、カウンセリングを受けることにしたそうです。
そこで気づいたのは、子どもの頃の経験でした。お母さんが感情の浮き沈みが激しい人で、「いい子でいないと見捨てられる」とずっと感じながら育ってきた。その恐怖が、恋愛の中で再現されていたんです。カウンセラーと一緒に「インナーチャイルドワーク」という方法に取り組み、今の大人の自分が、過去の怖がっている子どもの自分を守ってあげるイメージを育てていきました。「大丈夫だよ。君は一人じゃないよ。僕がついてるよ」と、心の中で子どもの自分に語りかける練習を続けた結果、相手の返信が遅くても「今忙しいのかな」と思えるようになり、不安の波に飲み込まれることが減っていったそうです。
38歳の女性のケースも印象的です。彼女は既婚者との関係に深く入り込んでしまい、それが終わった後、強い罪悪感と喪失感に苦しみました。一般的な「忘れるための方法」を色々試しても、どれもしっくりこなかった。そこで彼女が選んだのは、「完全に忘れる」ことを目指すのではなく、「痛みと共存する」方法を探すことでした。
森の中を歩き、木々の間から差し込む光を感じ、土の匂いを嗅ぎ、鳥の声を聞く。体の感覚に意識を向けるヨガやボディワークを続ける中で、「痛みはあってもいい。それを抱えたまま、今日を生きればいい」と思えるようになっていきました。完全に元気になったわけではないけれど、「痛みがあっても、私は生きていける」という感覚を少しずつ育てていったそうです。
これらの体験談から分かるのは、病み期からの回復は一つの道筋ではないということです。ある人には陶芸が、ある人にはカウンセリングが、ある人には森の中を歩くことが、それぞれの答えになりました。大切なのは、自分に合った方法を見つけることです。
ここで視点を変えて、病み期を違う角度から見てみましょう。
病み期は、ただ「乗り越えるべき辛い時期」というだけではないのかもしれません。体が風邪をひくことで免疫力をつけるように、心も病み期を経験することで「関係性における抗体」を獲得しているのかもしれないんです。
この期間に自分と深く向き合い、自分の心の癖やパターンを知ることは、将来的にもっと健康的な関係を築くための土台になります。「なぜ私はこんなに不安になるのか」「どんな時に心が揺れるのか」を知ることは、次の関係で同じパターンを繰り返さないための、大切な学びなんです。
また、現代社会においてSNSが人間関係を可視化し、定量化するようになったことで、病み期は「デジタル時代特有の恋愛ストレス反応」という側面も持つようになりました。これは決してあなたの弱さではなく、テクノロジーと人間の心理が作り出す、現代ならではの現象なんです。
そして、回復のスピードは人それぞれ違って当然です。「早く元気にならなきゃ」と焦る必要はありません。階段を一段ずつ上るのではなく、螺旋階段をぐるぐると回りながら上っていくような、そんなプロセスなんです。時には下に戻ったように感じることもあるでしょう。でもそれは、長期的に見れば必要なステップなのかもしれません。
今日の朝、起きた時に相手のことを考えなかった、という小さな変化。友達との会話で、相手の話題を出さずに30分過ごせた、という小さな成長。夜、スマホを見ずに眠りについた、という小さな勝利。
そういった小さな変化を、どうか見逃さないでください。そして、その一つ一つを、自分で認めて、褒めてあげてください。
病み期は、あなたに「もっと自分を大切にしていいんだよ」というメッセージを送っているのかもしれません。相手に振り回される人生ではなく、自分の軸を持って生きる人生へのシフトを促しているのかもしれません。
コメント