朝、洗面台の前に立って、いつものようにメイクを始める。ファンデーションを塗り、アイシャドウを重ね、まつ毛をカールさせて、リップを丁寧に引いていく。鏡の中の自分を見て「うん、今日もいい感じ」と思ってドアを開ける。
でも、ふとした瞬間に不安がよぎることはありませんか。「これって、厚化粧に見えてないかな」「男の人から見たら、ケバいって思われてないかな」「本当の私を見てもらえてるのかな」。
メイクは私たちにとって、自分を表現する大切な手段です。朝の儀式のように丁寧に施すメイクには、今日一日を頑張ろうという気持ちや、綺麗でいたいという願いが込められています。それなのに、知らず知らずのうちに「厚化粧」というレッテルを貼られていたとしたら、こんなに悲しいことはありませんよね。
今日は、男性たちが「厚化粧」と感じるポイントについて、できるだけ正直にお伝えしていきます。批判するためではありません。あなたの魅力をもっと引き出すための、一つのヒントになればいいなと思っています。
男性が「厚化粧」を判断する意外な基準
まず最初にお伝えしたいのは、男性の多くは化粧品のブランドや種類、テクニックについてほとんど知識がないということです。彼らはアイシャドウのグラデーションが何色使われているかなんて見分けられないし、コントゥアリングの技術も理解していません。
では、彼らは何をもって「厚化粧」と判断しているのでしょうか。
様々な男性に話を聞いてみると、興味深い共通点が浮かび上がってきました。それは「化粧の量」ではなく「不自然さ」への反応だったのです。
三十四歳の会社員男性はこう語ってくれました。「正直、女性がどれだけ化粧品を使っているかなんて分からないです。でも、なんか違和感があるなっていうのは感じる。それが何なのかうまく言えないんですけど、顔だけ別の人みたいに見えるときがあるんですよね」。
彼の言う「違和感」こそが、男性にとっての「厚化粧」の正体なのかもしれません。量ではなく、質感や調和の問題。これは、メイクを見直す上でとても重要な視点です。
顔と体の境界線が見えてしまうとき
男性が最も敏感に反応するポイントの一つが、顔と体の色の違いです。
三十二歳の男性が、少し言いづらそうにこんな体験を話してくれました。「初めてのデートで、すごく緊張しながらエレベーターに乗ったんです。そしたら照明の加減で、彼女の顔と首の色が全然違うことに気づいてしまって。顔は陶器みたいに白くて綺麗なんだけど、首から下は普通の肌色で。その境目がくっきり見えて、正直ドキッとしました。驚いたというか、ちょっと怖かったというか」。
彼は続けます。「別に彼女のことが嫌になったわけじゃないんですけど、あの瞬間は『この人の本当の顔ってどんなんだろう』って考えてしまって。それ以来、どうしてもそこに目がいってしまうんです」。
この体験談から分かるのは、男性は「騙された」という感覚に敏感だということ。色の不一致は、無意識のうちに信頼感に影響を与えてしまうようです。
また、二十八歳の男性はこんなエピソードを教えてくれました。「合コンで隣に座った女性と握手したとき、顔と手の色があまりに違っていて驚きました。顔はすごく白いのに、手は日焼けした普通の色で。なんだか、顔だけ仮面をつけているように見えてしまったんです」。
「仮面のような顔」という表現は、複数の男性から聞かれました。彼らは言葉にはしないものの、そういった違和感をしっかりと感じ取っているのです。
質感が「生きていない」と感じるとき
次に多かったのが、肌の質感に関する指摘です。
二十三歳の大学生は、照れくさそうにこんな体験を打ち明けてくれました。「彼女の頬にキスしようとしたとき、パウダーの香りがふわっと鼻に入ってきて、思わずくしゃみが出そうになったんです。しかも、唇に粉っぽさが残って。その後も気になってしまって、素直に甘い気持ちになれなかったのを覚えています」。
彼の顔には、その時の複雑な気持ちが浮かんでいました。好きな人に触れたい、でも何かが違う。そのもどかしさは、想像するだけで切なくなります。
三十六歳の男性は、もう少し踏み込んだ表現をしてくれました。「マットな仕上がりのファンデーションって、確かに綺麗に見えるのかもしれないけど、僕には『生きていない肌』に見えてしまうんです。人間の肌って、もっとしっとりしていたり、場所によってテカっていたりするじゃないですか。それが全部均一に消されていると、プラスチックの人形みたいで」。
ここで少し面白い話を挟ませてください。実は「肌の質感」への反応は、人間の本能と深く関係しているそうです。進化心理学の観点から見ると、人は無意識のうちに相手の健康状態を肌で判断しているといいます。肌のツヤや血色は、その人の健康や若さを示すサインとして認識されるのだとか。だから、それらを完全に覆い隠してしまうメイクに対して、本能的な違和感を覚える男性がいるのかもしれません。もちろん、これはメイクを否定するための理屈ではなく、なぜ男性がそう感じるのかを理解するための一つの視点として捉えていただければと思います。
パーツの主張が強すぎるとき
目元やリップなど、パーツメイクについての声も多く聞かれました。
二十九歳の男性は、少し困ったような表情でこう話しました。「彼女のまつ毛がすごく長くて、最初は綺麗だなって思ってたんです。でもあるとき、彼女が瞬きするたびにまつ毛が重そうに動いているのを見て、『大変そうだな』って思ってしまって。目が疲れないのかなとか、そういう実用的なことが気になり始めてしまいました」。
恋愛感情とは別のところで「心配」が生まれてしまう。これは男性ならではの視点かもしれません。
また、三十一歳の男性からは印象的なエピソードが寄せられました。「少し改まったディナーに行ったとき、彼女のつけまつ毛の端が少し浮いてきているのに気づいたんです。言った方がいいのか、気づかないふりをした方がいいのか、食事中ずっと悩んでしまって。料理の味なんて全然覚えていません。結局言えないまま終わって、帰り道もモヤモヤしていました」。
彼女のためを思うからこそ言いたい、でも傷つけたくない。そのジレンマを抱えながら過ごすデートは、きっと彼にとっても辛かったことでしょう。
リップについても意見がありました。「グロスでテカテカの唇って、見た目は綺麗かもしれないけど、食事のときにグラスにべったりつくのを見ると、ちょっと気になります。本人も飲みづらそうだし、大変だなって」。男性は意外と、そういった実用面でのことも見ているようです。
女性たちが語る「気づきの瞬間」
ここからは、女性たちの体験談をご紹介します。失敗や後悔の話もありますが、それを乗り越えた先にある気づきこそが、きっとあなたの参考になるはずです。
二十六歳の女性は、社会人になりたての頃を振り返ってこう話してくれました。「新入社員として、とにかく『ちゃんとしなきゃ』という気持ちが強かったんです。毎朝一時間かけてフルメイクして、完璧に仕上げて出勤していました。でもある日、気になっていた先輩に『最近疲れてる?顔色悪く見えるよ』って言われて。ショックでした」。
彼女は続けます。「その時は意味が分からなかったんです。こんなに頑張ってメイクしてるのに、なんで顔色が悪いなんて言われるんだろうって。でも後から考えたら、厚塗りのファンデーションで血色が消えて、不健康に見えていたんだと思います。良かれと思ってやっていたことが、逆効果だったんですよね」。
三十二歳の女性からは、交際中のパートナーとのエピソードが寄せられました。「付き合って半年くらい経った頃、彼に『メイク落とした後の方が好きだな』って言われたんです。最初は『え、それって今のメイクがダメってこと?』って複雑な気持ちになりました。褒められてるのか、けなされてるのか分からなくて」。
彼女は少し照れくさそうに笑いながら続けました。「でも、よく話を聞いてみたら、彼は私のすっぴんの顔にある小さなホクロとか、笑ったときにできる目尻のシワとか、そういう『私だけの特徴』を愛しているって言ってくれて。メイクで隠してしまうのがもったいないって。その言葉を聞いて、なんだか泣きそうになりました」。
好きな人に、ありのままの自分を受け入れてもらえる幸せ。それは、どんな完璧なメイクよりも、心を満たしてくれるものなのかもしれません。
SNS時代ならではの悩みを打ち明けてくれた女性もいました。二十四歳の彼女は、画面越しと実物の差に悩んだ経験があるそうです。「インスタで映えるメイクって、実際に会うと結構派手なんですよね。カメラ越しだと丁度いいバランスでも、肉眼で近くから見ると『あれ、濃いな』ってなる。マッチングアプリで知り合った人と会ったとき、明らかに相手の反応が写真を見たときと違っていて、帰り道一人で泣きました」。
彼女の声は、その時の悔しさを思い出しているようでした。「それからは、写真用のメイクと実際に人に会うときのメイクを分けるようにしています。どちらが本当の私かって言われたら、両方本当の私なんですけど、場面に合わせるって大事だなって学びました」。
年代や場面で変わる「適切さ」の基準
興味深いのは、メイクへの評価が年代や場面によって大きく異なるということです。
十代から二十代前半の若い男性に話を聞くと、比較的寛容な意見が多く聞かれました。二十歳の大学生は「みんな結構しっかりメイクしてるし、それが普通だと思ってます。むしろすっぴんの子の方が珍しいくらい」と言います。SNSやYouTubeでメイク動画を見慣れている世代は、濃いめのメイクに対する耐性が高いようです。
一方、三十代以上の男性になると、「自然な美しさ」を求める声が増えてきます。三十八歳の経営者はこう語りました。「若い頃は派手な女性に目が行っていた時期もありますが、年を重ねるにつれて、内側から滲み出る美しさに惹かれるようになりました。メイクでごまかしていない自信というか、自分を受け入れている余裕というか。そういうものを感じる女性に魅力を感じます」。
ビジネスシーンでの印象についても、意見が寄せられました。四十代の管理職男性は、少し厳しい表情でこう話しました。「商談の場で、非常に華やかなメイクの女性がいらっしゃると、正直なところ『仕事に集中できるのかな』と思ってしまうことがあります。もちろん、メイクと仕事の能力は関係ないと頭では分かっています。でも第一印象として、清潔感のあるナチュラルなメイクの方が、信頼できそうだと感じてしまうんです」。
これは偏見かもしれません。でも、現実としてそういう見方をする人がいるということは、知っておいて損はないでしょう。
海外経験のある男性からは、文化の違いについて興味深い話を聞くことができました。「ヨーロッパで働いていた時期があるんですが、向こうの女性のメイクは日本と全然違いました。肌のアラを隠すというより、自分の持っている特徴を活かす方向性というか。シミやそばかすもそのままで、でも目元だけしっかりメイクしているとか。最初は違和感がありましたが、慣れてくるとそれがとても魅力的に見えるようになりました」。
「完璧に仕上げる」ことが美しいとされる日本と、「個性を活かす」ことが美しいとされる文化。どちらが正しいということではなく、美の基準は一つではないということを教えてくれるエピソードです。
男性が本当に見たいのは「あなた自身」
ここまで様々な意見を紹介してきましたが、一つ見えてきたことがあります。男性が「厚化粧」を避けたいと感じる根底には、「その女性の本来の姿を見たい」という願いがあるのです。
三十五歳の男性は、少し恥ずかしそうにこう打ち明けてくれました。「変な言い方かもしれないけど、好きな人のすっぴんを見たいって思うのは、その人をもっと知りたいっていう気持ちの表れなんです。メイクで作られた顔じゃなくて、朝起きたときの寝ぼけ顔とか、お風呂上がりのすっぴんとか、そういう無防備な姿を見せてもらえることが、二人の関係が深まっている証拠みたいで嬉しい」。
別の男性はこんなことを言っていました。「笑ったときに目尻にできる小じわとか、泣いたときに赤くなる鼻先とか、そういうのを全部消しちゃうのはもったいないと思う。それがその人の表情で、その人の歴史で、その人らしさだから」。
彼らの言葉からは、外見だけでなく、その人の「人間らしさ」を愛したいという深い欲求が伝わってきます。完璧に整えられた顔ではなく、感情が動いたときに変化する生きた表情。それこそが、本当の意味での魅力なのかもしれません。
自分らしいメイクを見つけるために
では、どうすれば「厚化粧」と思われずに、自分の魅力を最大限に引き出せるのでしょうか。
経験豊富な美容アドバイザーの言葉が印象に残っています。「メイクは自分を隠す仮面ではなく、自分を表現するキャンバスです。土台となる肌を完全に覆い隠すのではなく、その上に色を添えていく感覚で。引き算のメイクを意識してみてください」。
具体的なポイントとしては、まず「顔と体の色を合わせる」こと。ファンデーションを選ぶときは、顔だけでなく首や手の色と比べてみる。自然光の下でチェックするのがベストです。
次に、「質感を活かす」こと。完全にマットに仕上げるよりも、適度なツヤを残すことで、生き生きとした印象になります。特に頬骨の高いところや鼻筋など、光が当たる部分にハイライトを入れると、立体感が出て自然な美しさが際立ちます。
そして、「強調するパーツを絞る」こと。目も唇も頬も全部を強調しようとすると、どうしても濃い印象になってしまいます。今日は目元を主役に、今日はリップを主役に、と日によってポイントを変えてみるのも楽しいですよ。
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